以前、「STP分析とはなにか?地方マーケティングにおけるSTPの活用方法について。」で、STP分析の基本的な考え方と活用法をお伝えしました。しかし、フレームワークの仕組みだけでは理解が難しい…と感じる方も少なくないと思います。
本記事では、STP分析を活用したターゲティングを業種ごとに紐解き、地方におけるマーケティング戦略で押さえたいポイントを解説していきます。
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目次
セグメンテーション: 市場をどのように細分化するか。
ターゲティング: どのセグメントを狙うべきか。
ポジショニング: 自社の立ち位置をどう定めるか。
製造業の場合
飲食店の場合
STP分析とは
STP分析は、マーケティング戦略を策定する上での基本的なフレームワークの一つです。
具体的には「セグメンテーション(S)」「ターゲティング(T)」「ポジショニング(P)」を体系的に整理する手法です。
このプロセスを順番に検討していけば、市場を細分化し、特定の顧客層に焦点を当て、競合他社との差別化を図ることができます。
今回は単純化してお伝えしますが、本来はこの3ステップを行ったり来たりしながら、ターゲットを絞っていきます。まずは、概略を押さえるところからはじめましょう。
STP分析の基本ステップ
【1】セグメンテーション: 市場を分ける
市場を細分化し、顧客の特性やニーズに基づいてグループ分けを行います。一般的には、年齢、居住地、ライフスタイル、購買行動などで分けると言われていますが、個人的にはサイコグラフィック(価値基準)で細分化するほうがより精緻なターゲティングができると考えています。
【2】ターゲティング: 狙いを決める(定める)
【1】の分類から自社の強みを活かせるターゲットを選定していきます。市場の規模、成長性、競合の強み・弱み、自社のリソースなどから、最も魅力的なセグメントを選択するのが一般的です。
【3】ポジショニング: 優位性を築けるポジションを見出す
【2】で狙いを定めたセグメントのなかで、競合になりうる商品・ブランドを挙げ、そのなかで優位性を築けるポジションを探していきます。
▼STP分析の具体的な方法と、分析の精度を上げる深掘りの方法はこちらの記事にまとめました。
業種別でみるSTP分析
分析の流れがざっくりとわかったかもしれませんが、それでもなかなかピンとこない方に向けて、ここからは業種ごとにどのようなセグメント、ターゲット、ポジショニングが考えられるか順を追って解説しましょう。
※分析のステップをわかりやすくするため、かなり簡略化してお伝えしています。
製造業の場合
例えば、金属加工部品を扱う中小企業のSTP分析をしてみましょう。
①セグメンテーション
まず、どのような軸が考えられるか、市場調査を行います。先入観で選ばないよう、どのような軸でセグメントを切れるのかなるべく多く書き出します。
例)
変数 | セグメントの例 |
顧客企業の規模 | 大企業 中堅企業 小規模企業 |
業界 | 自動車産業 電機産業 建設機械産業 航空宇宙産業 |
製品用途 | 量産品向け 試作品向け 特注品向け |
地理的範囲 | 国内 海外 |
技術要求レベル | 高精度加工が必要な顧客 標準的な精度で十分な顧客 コスト重視の顧客 |
発注頻度 | 定期的な大量発注 不定期の小ロット発注 緊急発注が多い顧客 |
次に、変数を2つ選び、対象になる市場を分析してみましょう。
例)顧客企業の規模×発注頻度
※変数の中身はわかりやすさを重視し簡略化しました。本来は案件数や売上高など、数字を当てはめて分析します。
大企業 | 中堅企業 | 小規模企業 | |
定期的な大量発注 | 多い | 少ない | 少ない |
不定期の小ロット発注 | 少ない | 少ない | 多い |
緊急発注が多い顧客 | 少ない | 多い | 少ない |
②ターゲティング
書き出したセグメントのうち、自社の強みを活かせるターゲットを選定していきます。特に重視したい先に絞り込みましょう。
選んだセグメントの中で競合商品やカテゴリーを当てはめ、注力すべきセグメントを見極めます。
例)
大企業 | 中堅企業 | 小規模企業 | |
定期的な大量発注 | 多い | 少ない | 少ない |
不定期の小ロット発注 | 少ない | 少ない | 多い |
緊急発注が多い顧客 | 少ない | 多い | 少ない |
③ポジショニング
ポジショニングはターゲットを絞っていく過程で定まっていきます。絞ったターゲットの中から自分たちが勝てるポイントはどこなのか?最も優位性のある場所はあるか?を検討します。
飲食店の場合
次に、地方の小規模な飲食店のSTP分析をしてみましょう。
①セグメンテーション
BtoCビジネスの場合、性別や嗜好も変数になる可能性があります。
例)
変数 | セグメントの例 |
年齢層 | 子供、若者、ミドルエイジ、シニア |
性別 | 男性、女性 |
職業 | 学生、会社員、自営業者、退職者 |
ライフスタイル・嗜好 | 健康志向: ヘルシー志向の顧客 グルメ志向: 高級料理や特別な食体験を求める顧客 利便性志向: ファストフードやテイクアウトを好む顧客 |
地理的セグメント | 都市部: 主要都市の顧客 地方: 郊外の顧客 |
購買行動 | 頻繁に外食する 特別なイベント時のみ利用する |
経済的セグメント | 高所得層: 高価格帯のメニューを提供 中所得層: 手頃な価格で質の良い食事を提供 低所得層: コストパフォーマンスを重視したメニュー |
次に変数を2つ選び、対象になる市場を分析してみます。
例)ライフスタイル×経済的セグメント
※変数の中身はわかりやすさを重視し簡略化しました。本来は客層や販売数など、数字を当てはめて分析します。
健康志向 | グルメ志向 | 利便性志向 | |
高所得者層 | 多い | 多い | 少ない |
中所得者層 | 少ない | 多い | 多い |
低所得者層 | 少ない | 少ない | 多い |
②ターゲティング
書き出したセグメントのうち、自社の強みを活かせるターゲット市場を選定します。
選んだセグメントに競合商品やカテゴリーを当てはめ、注力すべきセグメントを見極めます。自社が目指すべきセグメントは自社、競合、顧客の3Cの中で「顧客が求めていて、かつ競合よりも自社に優位性がある」セグメントである必要があります。
③ポジショニング
①②を経てポジショニングを決めていきます。
STP分析が適さないケースと代替手段
STP分析は、マーケティング戦略を立てる上で非常に有用なフレームワークですが、すべての企業に適しているわけではありません。いくつかのケースでSTP分析を使用することが難しい場合があります。
①ターゲットを絞れない
地方の中小企業においては、リソースが限られているため、たくさんの打ち手が講じられず、ターゲットを絞り込むことで逆にビジネスチャンスを逃す原因となることがあります。
②年齢・性別でセグメントできない
ターゲットを年齢や性別でセグメントすることは一般的ですが(年齢や性別で区別することが懐疑的であるという声も強くなってきています)、すべてのビジネスにおいてこのアプローチが有効とは限りません。例えばハンドソープや洗剤などの消費財や、電気・ガス・水道など万人が使うものは区別ができないと思います。
③既存顧客が少ない
人口10万人以下の地方都市では商圏規模自体が小さいため、対象少なかったり、顧客数が少ないために有意差が見えづらくなってしまったりします。
このようなケースでは、STPに固執するのではなく、ほか手段も含めた柔軟なアプローチが求められます。顧客のフィードバックを積極的に収集し、少数の顧客との関係を深めることで、徐々にデータを蓄積し、次第にターゲティングを精緻化していくことも重要となります。
HONEではSTP分析の追加・代替として、「ターゲティング・オケージョン・プレファレンス」を推奨しています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】
株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。
※本記事は一部AIを活用して執筆しています。
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