新規事業において効果的な営業戦略の立案は、事業の根幹を成す重要な要素の一つです。
また、限られた人員や資金を最大限活用するため、販売チャネルの選定や効果的なマーケティング施策について判断と実行をしていく必要があります。本記事では、心理学の理論に基づいて成功への道筋を見つけるアプローチについて考察し、さらに有効な外部サービスについてもご提案します。
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新規事業の判断基準について考える-正確な判断を下すための心理学の理論-
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目次
新規事業の営業戦略にありがちな課題
①「勝ちパターンの営業方法」が存在しない
②利用可能なリソース(ヒト / モノ / カネ)が少ない
③一つの営業戦略の失敗が事業全体に大きな影響を与える
営業戦略の成功確度が高まる論理的思考法
①データ分析によって事業環境を見える化する
②統計的思考によって成功確率の高い施策をあぶり出す
③行動心理学によって効果的な営業手法を検討する
新規事業の営業戦略を後押しする外部サービス
①アンケート、インタビューサービス
②テストマーケティング
③営業代行、業務委託
④マーケティング・コンサル
まとめ
新規事業の営業戦略にありがちな課題
本項では、営業戦略を立案するにあたって直面する、新規事業ならではの課題について解説します。
これらの課題を浮き彫りすることで、従来のビジネスモデルにこだわらず、柔軟かつ論理的に営業戦略を考える重要性を明確に示します。
①「勝ちパターンの営業戦略」が通用しない
新規事業においては、まだ市場にない新しい製品やサービスを提供するため、従来の経験による「勝ちパターンの営業戦略」が通用しないことが多くあります。
これは、競合他社が少ない市場や、全く新しい発想のサービスなどを展開しようとする場合に特に顕著となります。
これは逆に言えば、型にはまらない柔軟なアプローチで営業戦略を立案する有効性が高いということでもあります。
経営層や営業部門トップは、従来のビジネスモデルでの成功体験に拘泥せず、論理的により成功確率の高い施策を志向することが求められます。
また営業現場でも、顧客のニーズや課題をリアルタイムで把握し、常に方針を改善しながら営業活動を行う仕組みを作る必要があります。
②利用可能なリソース(ヒト / モノ / カネ)が少ない
新規事業を立ち上げる際、多くの局面において、リソースの不足が律速要因となります。特に、ヒト、モノ、カネは、事業の成否に大きな影響を与える要素です。
まず人員が限られる新規事業では、各メンバーが多岐にわたる業務をこなす必要があり、「足で総当たり」ような物量に任せた営業活動を行うことが難しくなります。
また、すべての業務について専門知識や経験を持った人材を配置できず、知識や経験の不足によって貴重な時間を浪費したり、余計なリスクに直面することもあります。
さらにモノ、カネの面でも、理想的な立地や設備、潤沢な資金が備わった状態で立ち上げに望める事例はごく少数です。ほとんどの新規事業では、限られた強みと資金の範囲で営業活動やマーケティング施策を進めざるを得ません。
このようにリソースが限られる状況では、外部サービスの活用も視野に入れてリソースの投入先と効率的な活用を考えることが、新規事業の成功に向けた第一歩となります。
③一つの営業戦略の失敗が事業全体に大きな影響を与える
新規事業においては、事業のコアとなる特定の商品やサービスに対して、事業のリソースの多くを短期的に投入しなければならない場合があります。
営業戦略の失敗によって、これらの商品やサービスにより狙った収益が確保できない場合、事業全体の財務状況に大きな影響を与えることが懸念されます。
さらに、新規事業でのマーケティング戦略の失敗によって企業のブランドイメージを損なえば、従来事業にも悪影響を及ぼすリスクがあります。
そのため、新規事業の営業戦略を策定する際には、慎重な分析と計画が不可欠です。市場の動向や競合の状況を把握し、柔軟に戦略を見直して失敗の目を素早く摘み取る体制を整えることで、失敗のリスクを最小限に抑えることが可能となります。
営業戦略の成功確度を高める論理的アプローチ
①事業環境をデータによって把握する
新規事業の有効な営業戦略を検討するためには、まず社内外の事業環境を数値的なデータによって、事業に関する状況を客観的に把握する必要があります。
ここでは、大きく2つの段階があります。
i. 徹底した社内外の情報収集で正確なデータを得る
まず社内外の様々なデータを取得する作業について考えます。
この作業は、複数の媒体からデータの収集方法を計画し、収集するデータを選定することから始まります。
この際、このデータの選定や収集の段階で、作業の効率性などを追求するあまり、都合の良い情報だけを収集する「チェリーピッキング」に陥らないよう注意が必要です。
そのためには、できる限り網羅的かつ公平にデータを収集すべきと考えられています。課題となる内部状況や競合他社に有利な外部環境など、自社の事業に不利と思われるデータについても、公平に収集対象として取り扱うことが重要です。
これは、不利なデータから事業の改善点を発見できたり、一見無関係なデータが新たな示唆を与えてくれることも多くあるためです。
ii. 客観的な情報整理で事実理解を助ける
こうして得たデータについては、社内での理解や利害関係への共有のため、グラフや表での見える化やプレゼン資料としての整理を行う必要があります。
この際、様々な複雑な事情を抱えた状況に対して、一定の結論を導くようなきれいなストーリーに沿って解釈しようとすることは、「過剰な一貫性」によって事実の歪曲を招きかねないため注意が必要です。
そこで、整理が難しい状況については、異なる視点から分析を試みる、相反する点があることを含めて説明する、などの客観的で冷静な姿勢で対処を試みることが重要です。
こうした情報整理は、手間がかかったり、一見受け入れがたく感じられる場合もありますが、営業戦略の立案においては正確な判断を長期的に助けてくれるものとなるでしょう。
より詳しい解説記事はこちら。
②統計的思考によって成功確率の高い施策をあぶり出す
新規事業の営業戦略では、内外の環境や事実の十分な理解に基づいて、顧客獲得や売上拡大に向けた具体的な施策を決定します。
この段階は営業戦略立案の最も重要な部分であると同時に、困難な段階であるとも言えます。つまり、どのような施策が顧客に対して実際に有効なのかを、正確に判断することが極めて困難だからです。
この困難さには、大きく2つの理由があります。
i. 選択可能な施策について全ての情報を得ることは不可能である
まず検討する施策や市場および顧客について、あらゆる情報を手に入れることは不可能です。
そこで活用できるのが統計的思考の一種である「参照クラス」という考え方です。
参照クラスとは、予測の対象となる事例を含むグループのことです。例えば、ある新製品の市場導入を考える場合、過去に近い業界に導入された製品群が、この新製品の参照クラスに該当します。
当たり前のように感じられますが、ここでは自社の事業に当てはまる適切な参照クラスを特定することが重要です。逆に言えば、成功した事例や目指す姿に注目するあまり、現在の自社の事業の現状から離れたクラスを参照してしまうことには注意が必要です。
また前項でも指摘したように、新規事業においては参考になる事例自体が少ない場合もあります。
この場合、事業全体でなく、主要な要素に絞って参照クラスを活用する手法を取らざるを得ないこともあります。
ii. 認知バイアスやノイズによって、予測の正確性が損なわれる
また感覚的な判断によって認知バイアスやノイズの影響を受け、判断の正確性が損なわれてしまうリスクがあります。
特に「連言錯誤」や「代表性ヒューリスティック」による見込み違い、「確証バイアス」や「過度の一貫性」による判断の偏りにより、楽観的な予測となってしまうことに注意する必要があります。
そこで活用できるのが、同じく統計的思考の一種である「基準率の参照」という考え方です。
基準率とは、ある特定の事象が起こる頻度や確率のことです。例えば、一般的に見て新しいビジネスが成功する確率や、ある国での病気の診断精度などがこれに含まれます。
こうした一般的な頻度や確率を念頭に置くことで、感覚的な予測に陥ってしまう事態を避けることができます。
さらに、これらを組み合わせ、自社の事業の要素を含む「参照クラス」において、特定の施策の成功確率を「基準率」として参照することで、より予測の確率を上げることを期待できます。
もちろん、新規事業では十分なデータや先行事例の情報を得られない場合も多くありますが、限られたデータや情報を元にした統計的な予測であっても、感覚的な予測に比べて正確であることは疑うべくもありません。
③消費者の行動から効果的な営業手法を検討する
前述の通り、新規事業の営業戦略では、特に限られたリソースで高い営業効果を得る工夫が必要です。
そこで本項では、どのようなリソース投入を行うかを、消費者の行動から検討することの有効性について紹介します。
ここでも、大きく2つのポイントがあります。
i. 売上や利益拡大につながる行動を見極める
顧客の行動の中で、売上や利益につながるポイントとなる行動を特定し、その行動を促したり、行動への障壁を取り払うことを目的として、販売チャネルやPR方法等の営業戦略を組み立てていきます。
この際、消費者の購買行動モデルを表すモデルのひとつである、「AISAS」のようなフレームワークによって整理することが有効です。
例えば、比較的安価で価値が伝わりやすい商品の場合、Web広告など、幅広い顧客の「Attention(注意)」を促進することがポイントになると考えられます。
比較的高価で慎重に検討されるサービスの場合、信頼できる第3者の推薦や口コミなど、「Share(共有)」の質を向上させることがポイントになると考えられます。
また販売チャネルについても、EC販売、対面販売、卸販売など、顧客が売上や利益につながる行動を起こしやすいかどうかの視点で選択をするとよいでしょう。
より詳しい解説記事はこちら。
ii. 顧客の実際の行動と理論の差異を見極める
こうした視点で営業戦略を検討しますが、実際の顧客の行動は、理論とは異なる場合が往々にしてあります。こうした点を見極めることが、新規事業の継続と拡大に重要となります。
つまり、ここで見られた理論と実際の行動との差異こそ、営業戦略を継続的に改善していくためのヒントであるとも言えるのです。
営業戦略が予想よりもうまく行った点 / そうでなかった点を素早く分析し、次の営業戦略につなげることで、さらに効果的な営業戦略を組み立てることができます。
新規事業の営業戦略を後押しする外部サービス
営業戦略の組み立てや改善において重要となる以下のようなポイントで、適切な外部サービスを活用することも有効な場合があります。
i. 参照クラスや基準率といった事例の情報
ii. フレームワークや顧客の行動理解といった理論
iii. 実際の顧客の行動分析作業
新規事業を支援する外部サービスにはコストがかかるというイメージがありますが、社内の試行錯誤にかかる時間的 / 人的コストを削減し、事業の展開を加速させるツールとして検討の余地は十分にあるでしょう。
①アンケート、インタビューサービス
参照できる先行事例が少ない新規事業でも、近年増えつつあるサービスを活用することで、必要な情報を比較的安価に入手することができます。
求める情報や活用方法が具体的にイメージできている場合に有効です。
事例の情報: 専門家へのインタビューサービス
顧客の行動: Web調査サービス、対面調査サービス
②テストマーケティング
テストマーケティングでは、アンケートやインタビューに比べてコストや手間がかかりますが、実際の製品やサービスのプロトタイプを小規模で販売し、顧客の反応を確かめることができます。
従来は難しかった短期かつ小規模での販売が可能なプラットフォームサービスが増えており、テストマーケティングに活用することが出来ます。
オンライン販売: クラウドファンディン、EC販売プラットフォーム
対面販売: 売り場貸しサービス、イベント出店
③マーケティング・コンサルタント
どのような情報を収集すればよいかが明確でない場合、製品やサービスのプロトタイプの設計のポイントで悩んでいる場合、自社の事業に活用できる理論について効率的に学びたい場合などに活用することで、事業の展開を加速させることができます。
高価なサービスですが、曖昧な課題を明確化し、具体的な施策を導き出すためのパートナーとして、共に悩みながら事業に伴走してくれるコンサルタントは、あなたの事業の強力な味方となるでしょう。
まとめ
本記事では、論理的なアプローチで営業戦略を立案する重要性とポイントについて解説しました。論理的に営業戦略を立案するためには、その根拠となる情報をまとめる手間と時間がかかりますが、その価値は十分にあると言えます。
また事業環境や顧客の行動についての情報収集や分析を行う外部サービスについても紹介しました。こうしたサービスを上手く活用することで、より効率的に有効な営業戦略を立案する事ができるでしょう。
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当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。これは、事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをするサービスです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】
株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。
※本記事は一部AIを活用して執筆しています。
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