マーケティング戦略の世界は多様で複雑ですが、この記事ではその「全体像」と「具体的な事例」を解説していきます。課題別の戦略からフレームワークの適用例まで、ビギナーにも分かりやすい形でご紹介。
さらに、実際の企業が用いた戦略のサンプルレポートもご用意しているため、ぜひ実戦でご活用ください。
目次
マーケティング戦略のこれまでの定義
提唱されている新しい定義
マーケティング戦略の全体像
各フェーズごとの説明
MVV・目標設定
市場分析
自ブランドの理解
コンセプト設計
コミュニケーション設計
外部環境分析:PEST分析、5F分析
内部環境分析:SNS/GoogleMapレビュー分析
定量アンケート設計
競合分析:POP/POD分析
マーケティング戦略とはなにか?
マーケティング戦略とは、企業や組織が市場での競争に勝つために策定する計画のことです。戦略は、市場のニーズや顧客の行動を理解し、それに基づいてブランドのプロダクトやサービスをどのように価格設定し、プロモーションし、配荷するかを決定するものです。
成功する(と言われる)マーケティング戦略は、市場の特定、ターゲットの明確化、競合他社との差別化、そして顧客との強い関係構築ができている状態といえます。これには、市場調査、消費者理解、全体を通して一貫性のある戦略的な計画/設計、そしてなによりも実行が不可欠であり、常に環境の変化に応じて適応する柔軟性が求められます。
マーケティング戦略のこれまでの定義
マーケティング戦略の定義は時代と共に進化してきましたが、基本的な枠組みは大きく変わっていないように感じています。
従来からのマーケティング戦略は、市場分析、ターゲット設計、競合分析、そしてマーケティングミックスの4P(Product, Price, Place, Promotion)を核としています。
これらの要素を組み合わせることで、企業は市場での競争優位性を築き、顧客のニーズに応える製品やサービスを提供することができます。また、SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)を用いて、内部環境と外部環境を評価し、戦略を調整することも現在も一般的に行われています。
これらのアプローチは、多くの企業にとって長年にわたり効果的なガイドラインとなっているため、変わることはないでしょう。しかし時代に合わせて変えるべきポイントもあるため、次に提唱されつつある新しい定義についても触れていきたいと思います。
提唱されている新しい定義
コロナ以降、デジタル技術の進化と市場環境の変化に伴い、マーケティング戦略にも新しい定義が提唱されつつあります。
新しいアプローチでは、従来の4Pに加え、顧客体験(Customer Experience)や顧客とのエンゲージメントを重視することが強調されています。
また、データドリブンな意思決定がより可能になったため、リアルタイムでの市場動向の分析や、個々の顧客の行動パターンに基づいたパーソナライズされたマーケティング戦略を展開することがより一層求められています。
これにより、企業はより効果的に顧客のニーズに応え、長期的な顧客関係を築くことが可能になるとされています。この新しい定義は、特にデジタルネイティブな企業やスタートアップにおいて、急速に活用されている傾向にあります。
マーケティング戦略の全体像と各フェーズ
マーケティング戦略の全体像を理解するためには、その構成要素を明確に把握することが重要となります。
一般的に、マーケティング戦略は複数のフェーズに分けて展開されます。はじめに、市場調査と分析が行われ、ターゲットのニーズや競合他社の分析に移行し調査をします。次に、戦略的な目標が設定され、具体的なマーケティングミックス(商品、価格、プロモーション、配荷場所)が計画されます。
この段階では、顧客に最大の価値を提供できる戦術設計も検討しながら戦略策定をしていきます。そして、実行フェーズに移行し、計画された戦略・戦術が具体的なアクションとして展開されます。
その後、検証と評価が行われ、必要に応じて戦略・戦術の調整が行われます。このサイクルを通じて、企業は市場での競争優位を築き、持続可能な成長を目指していきます。
マーケティング戦略の全体像
マーケティング戦略の全体像をさらに深堀りすると、まずは市場の理解から始まります。企業が市場をどのように捉え、どのように対応していくかが戦略の鍵を握ります。
具体的には、市場セグメンテーションによりターゲット顧客を明確に定義し、それぞれの顧客群に最適な製品やサービスを提供する計画を立てます。次に、ポジショニング戦略を通じて、ブランドのプロダクトが市場内でどのような位置づけにあるかを決めていきます。ここには、競合との差別化やブランドイメージの構築が含まれてきます。
さらに、マーケティングミックスの4P(Product, Price, Place, Promotion)を適切に管理し、各要素が互いに補完し合うように調整することが求められます。これらの戦略的な取り組みにより、企業は市場での成功を目指し、持続的な成長を達成するための基盤を築くことができます。
各フェーズごとの説明
マーケティング戦略を展開する際には、各フェーズごとの詳細な計画が必要となります。市場調査フェーズでは、ターゲット市場のニーズや競合情報を収集し、市場のトレンドを把握します。次に、戦略策定フェーズで、収集したデータを基に具体的な戦略を定めていきます。
上記は当社のフェーズごとを言語化した図となります。
ここでの一連の中でプロダクト開発、価格設定、流通チャネルの選定、プロモーション戦略が練られます。そして、実行フェーズでは、策定された戦略を具体的なアクションプランに落とし込み、市場に展開していきます。
実行の後、検証・評価フェーズで実施した戦略の効果を測定し、必要に応じて修正を加えていくことで、戦略を継続的に最適化していきます。各フェーズを丁寧に実行することで、マーケティング戦略の成功率を高めていきます。
各フェーズごとの解説
ではここからは当社の各フェーズがどのように分かれているか?具体的にどんなことを留意して戦略策定をしているか?について解説していきたいと思います。
マーケティング戦略設計は状況に応じて順序を入れ替えたり飛ばしたりと少し変わっていきますが、以下の内容をベースにすれば大まかには変わらないと考えています。
<MVV・目標設定>
全体のロードマップ
MVVの確認/再定義・短期(1年以内)及び中長期(5年以内)の具体的な目標設定
コンセプト、ブランドスローガン、パーパスなどの確認/再定義
まず、ブランドとしてどこが起点となったのか?(企業理念・ミッション)、これからどこを目指すのか?(ビジョン)、何を大切にしているのか?(バリュー)を確認していきます。その上で、必要に応じてコンセプト・スローガン・パーパスなどの言葉の定義再解釈をして自社の目指すべき方向性を確認していきます。
<市場分析>
MVVの確認・決定
市場分析(3C/5C・SWOTなど)
他社事例から市場機会を考える
理念やビジョンなどの上位概念の目線合わせを行ったあとは、市場分析を行い全体を俯瞰し確認していきます。5C分析(顧客・競合他社・自分・景気/世論・関連業界の動き)を行いながら全体を把握していきます。
その後、5C分析から導き出された構造仮説と、顧客の意思決定の重要な要素(何を購入の基準にしているのか)、自分たちの強みを掛け合わせ、勝ち筋の取れる市場を選択します。
<自ブランドの理解>
ブランドエクイティ・ピラミッドの整理・作成
STP
ユーザーインサイト
市場分析で見出したニーズと自ブランドの強みが重なる部分(=勝ち筋)を決めた後は自ブランドの強みを再度言語化していくフェーズに移ります。
ここではブランドエクイティピラミッドをつくります。ブランドエクイティピラミッドの作り方・詳細は以下の記事をご参照ください。
さらに、他者との差別化を行う上で、「ユーザーが自ブランドでなければならない理由を特定」していきます。
具体的にはPOP(Points of Parity=カテゴリーで最低限担保しなければならない要素・(これが欠けると)ターゲットがブランドを選ばない理由
)と、POD(Points of Difference=競合に比べて優位性や差別化をもたらす要素(これがあると)ターゲットがブランドを選ぶ理由)を言語化していくイメージです。
<コンセプト>
ビジネスコンセプトを言語化
コンセプトハウスを用いたコンセプトライティング
作成したコンセプトを定量・定性調査
市場分析&自ブランドの深掘りした接点を「消費者に向けた言葉」で言語化していきます。ブランドコンセプトで大切なのは、消費者言葉で書くことです。これまでの5Cやブランドエクイティピラミッドなどは内部理解(ビジネス言葉)でしたが、ブランドコンセプトは消費者に向けて書くため、より平易な言葉でまとめていく必要があります。
<コミュニケーション設計>
これまでのアウトプットをもとに4P/4C視点で顧客体験最大化を設計
売上目標に応じた販促予算、利用メディア、コンテンツ、クリエイティブなどの戦術的な施策を検討
ここまで言語化した後は、4P/4Cに落とし込み、顧客の行動変容を設計していきます。4Pはブランド側の視点、4Cは消費者側の視点に立って言葉にしてみると、独善的にならずに整理できると思います。
行動変容の設計についてはオルタネイトモデルが大変有効なのでお使いすることをおすすめします。詳細は「未顧客理解」をお読みいただけるとより一層理解が深まると思います。
以上の5つのフェーズを通ることで、マーケティング戦略をより確かなものにしていくことができます。次はレポート実例を出しながらより具体的に解説していこうと思います。
マーケティング戦略レポート実例
ここのフェーズではマーケティング戦略レポートの実例をご紹介していきます。
外部環境分析:PEST分析、5F分析
内部環境分析:SNS/GoogleMapレビュー分析
定量アンケート設計
競合分析:POP/POD分析
それぞれのフェーズごとの具体的なレポートサンプルを元に解説します。
以下は戦略フェーズの具体的な調査・検討事項です。全容は以下に沿って進めていきます。
外部環境分析:PEST分析、5F分析
外部環境分析の手法として、PEST分析と5F分析は企業が市場の広範な状況を把握するために不可欠です。PEST分析を用いることで、政治的なリスクや経済的な変動、社会的なトレンド、技術的な進展がビジネスに与える影響を詳細に分析することができます。これにより、政策変更や経済危機、社会的な要求の変化、新技術の導入といった外部要因に対して適切な戦略を立てることが可能になります。
一方、5F分析は業界内の競争状況を明確にするために行われます。業界の構造を理解し、競争優位を築くための戦略を考えることができます。これらの分析を組み合わせることで、企業は外部環境の変化に柔軟に対応し、持続可能な成長を目指すことができるのです。
内部環境分析:SNS/GoogleMapレビュー分析
外部環境分析に続いて、内部環境の把握もブランドにとって重要な要素です。特にSNSやGoogleMapのレビュー分析は、顧客の生の声を直接聞くことができるため、プロダクトやサービスの改善点を見つけ出すのに非常に効果的です。
これらのプラットフォーム内での顧客のフィードバックや評価を分析することで、顧客満足度の向上やリピーターの増加を図ることが可能になります。
SNSでは、投稿の頻度や内容、ユーザーの反応(いいねやシェア、コメントの数)を分析することで、顧客の関心事やニーズが何であるかを把握することができます。また、GoogleMapでは、地域に基づいた顧客の評価やコメントを集計し、地域ごとの顧客満足度の違いを分析することが可能です。
これらのデータを基に、企業はマーケティング戦略をより細かく調整し、顧客一人ひとりの期待に応えることが求められます。内部環境分析を通じて、企業は自身の強みと弱みを明確にし、それに基づいた具体的な改善策を立案することができます。
定量アンケート設計
定量アンケート設計は、企業が内部環境を分析する上で欠かせない手法の一つです。このアプローチにより、顧客の意見や感想を数値化し、統計的に分析することが可能になります。アンケートは、顧客満足度、プロダクトの使用感、サービスへの期待値など、多岐にわたる情報を収集するための重要なツールです。
アンケートの設計にあたっては、何を測定したいのかという目的を明確にすることが重要です。例えば、新しいプロダクトの市場受けを調べるためのアンケートでは、プロダクトの特徴や購入意欲、価格感に関する質問を含めることが考えられます。また、顧客のデモグラフィック情報(年齢、性別、居住地など)も収集し、データの分析をより深めることができます。
設計したアンケートは、オンラインでの実施が一般的ですが、場合によっては店頭やイベントでの紙ベースでの実施も効果的です。収集したデータは、後の分析で重要な意思決定の基になるため、どのようにデータを集め、どのように分析するかが成功の鍵を握ります。
競合分析:POP/POD分析
競合分析:POP/POD分析は、市場における自社製品と競合製品を比較し、それぞれの強み(Point of Parity, POP)と差別化要因(Point of Difference, POD)を明確にする手法です。この分析を通じて、企業は自社の製品が競合他社とどのように異なり、どのような価値を顧客に提供できるのかを理解することができます。
例えば、あるスマートフォンメーカーが他社製品との比較を行う場合、画面の大きさやバッテリーの持ち、カメラの性能などがPOPとして挙げられるかもしれません。一方で、独自の操作システムや特許技術、デザイン性などがPODとして評価されることで、消費者に選ばれる理由となります。
競合分析は、マーケティング戦略を練る上で非常に重要であり、製品開発、広告戦略、販売促進など、多方面にわたって影響を与えることがあります。競合との比較を通じて自社の位置を正確に把握し、市場での優位性を築くための戦略を練ることが可能になります。
まとめ
本記事では、マーケティング戦略の全体像から具体的な事例に至るまで、幅広く解説しました。マーケティング戦略とは、市場のニーズに応じてプロダクトやサービスをどのように展開していくかを計画することです。このプロセスには、外部環境の分析(PEST分析や5F分析)や内部環境の分析(SNSやGoogle Mapレビュー分析)、競合分析(POP/POD分析)などが含まれます。
これらの分析を通じて、企業は市場での自社の位置を明確にし、競合との差別化を図ることができます。また、定量アンケート設計を行うことで、消費者の声を直接聞き、製品開発やマーケティング戦略に生かすことが可能となります。
今回ご紹介したサンプルレポートを参考に、実際のビジネスシーンでの応用をぜひ試みてください。マーケティング戦略の理解と適用が、企業成長のカギを握るはずです。
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※本記事は一部AIを活用して執筆しています。
【記事を書いた人】
Takato Sakurai / 桜井 貴斗
HONE Inc. 代表取締役/マーケター
札幌生まれ、静岡育ち。大学卒業後、大手求人メディア会社で営業をしたのち、同社で新規事業の立ち上げ等に携わる。「売り手都合の営業スタイル」に疑問を感じていた矢先に、グロービス経営大学院にてマーケティングに出会い衝撃を受ける。その後、新たな新規事業の立ち上げを経て、2021年に独立。現在はクライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営などを手掛けている。
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