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執筆者の写真桜井 貴斗

マーケティングとブランディングの隔たりについて。

更新日:9月26日


マーケティングとブランディングの隔たりについて。

積読本を少しずつ読んでいるのですが、遅ればせながら「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」を読んで、マーケティングとブランディングの隔たりについて感じたことを書いてみようと思います(本書への批評ではなくこんな解釈の違いがあるのかという発見を交えた備忘録です)。





ブランディングとはなにか


本書ではブランディングを以下のように定義されています。


時代や環境、顧客ニーズを考えながら、戦略的に企業や商品やサービスの持つ「らしさ=個性」を引き出し、その価値をお客さまに与える総合体験の全てにおいて正しく演出し、効果的に伝わるかたちに落とし込むこと。これをブランディングと言います。 そしてブランディングのゴールはお客様にファンになってもらうこと。その結果、リピートして商品やサービスを継続購買してくださるロイヤルカスタマーになります。

ここの定義を読んだとき、共感50%・反論50%くらいだと感じました。じゃあなぜそう感じるか?について私なりに考えてみました。



役割の違い


私はマーケターなので、最終的には利益貢献・成果貢献がゴールとなります。事業や経営にインパクトのないブランディング・マーケティングに意味はあるのか?(いやないだろう)と考えています。一方で、アートディレクターの役割は「らしさ=個性」を引き出し、プロダクト・サービスにクリエイティブ・コミュニケーションとして落とし込むことがゴールではないかと思います。つまり役割が異なるので定義も異なるはずだと思っています。



案件規模の違い


本書の事例を見るに、リブランディングの背景はネガティブなものよりもポジティブ(よりグロースしていきたいなど)なものが多く、多くの企業は財務的に安定しているように見受けられました。それなりの予算がある中で進められるブランドづくりであるということです。一方で私が直面している仕事は、人口数人の限界集落から数十万人(せいぜい50万人ほど)の地域・地方が対象となります。財務も安定しているとは言えません。案件の規模やスタート地点が異なることも1つの要因だと感じました。



目的の違い


最後に目的です。本書ではファンを増やし、ロイヤルカスタマーになっていただくことがブランディングのゴールだと定義されていましたが、これは「パレートの法則(2:8の法則👉 顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているという法則のこと)に則っているかもしれませんが、すべてのブランドに当てはまる定義ではないと考えているため、「ファンでなくとも生活の一部として買っているもの、むしろ大好きではないが買わざる得ないもの(洗剤とか輪ゴムとか)」においても事業や経営が安定するのであれば、ブランディングの領域だと考えています。



以上のことから共感と反論が同居した、と言ったところです。



詰まるところ、ブランディングを「だれ」の「なんの目的のために」使うのかによって変わってくるかもしれません。なぜならば、ブランディングは特定の目的のための手段だからです。



マーケターとアートディレクターの役割の違い


本書にも書いてあってなるほどと思ったのが、ブランドづくりは「バーバル(言葉・言語化)」と「ビジュアル(意匠・図解化)」に分かれるということです。



ここの切り分けがマーケターとアートディレクターで相互に理解しあっていないと危ないと感じる部分だと思います。私自身、「バーバル領域がマーケター」、「ビジュアル領域がアートディレクター(デザイナー)」と切り分けています。


実際にマーケターとして私が現場で使っているブランド戦略は以下のような1〜5の手順で言語にしていっています。



まずブランドとして大切にしているMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を言葉にし、市場をとらまえた上で自分たちのブランドの理解を進め、コンセプトに落とし込み、マーケティング戦略として実装していくようなイメージです。



「マスマーケット」をどう解釈するか


その上で、本書では以下のような言葉を使われていました。


マスマーケットを狙ったターゲット設定だと

理解していただきたいのは、マスマーケットを狙ったターゲット設定は成功に導くのが難しいということ。ターゲット層を広く設定したからといって、たくさんにリーチできるわけではありません。むしろ、多くを狙うがために戦略が曖昧になり、狙ったターゲットに効果的に伝えることができなくなってしまいます。

総論は賛成なのですが、市場にある程度の規模がなければ事業成功も難しいのもまた事実だと思っています。例えば、今伸びているEC事業の中で「なんでも販売しているモールビジネスをはじめる」というのはいささか無理があるのですが、「ハーブに特化したECブランドをはじめる」と言った切り口は良い、と言った感じです。


これが、そもそも斜陽産業のビジネスの中で・・・となるとまた話が変わってくると思います。そもそも斜陽産業ではマスを狙わなければ継続していけなくなる恐れがあるため、競合他社を出し抜いても生き残る必要があります。マスマーケットを狙ったターゲット設定とは、あくまでも「どの市場を狙っていくか(その市場が伸長しているのか、縮小しているのか)」によって変わってくるため、その為にこそ、市場分析は必須でありとても大切だと思います。



マーケター・コンサルタントが最終アウトプットをわかっていない、という誤解


本書ではマーケター・コンサルタントについて以下のように言及されていました。


マーケターやコンサルタントが最終アウトプットがイメージできない

マーケターやコンサルタントが最終アウトプットをイメージできないまま、市場にフォーカスしたブランド戦略を先に構築して、その後にクリエイティブを入れていくやり方をしているところがほとんど。クリエイティブの立場からみると、どんなに素晴らしいブランド戦略を構築しても、最終アウトプットが魅力的にできなければ机上の空論。お客様の手にとってもらうことも、リピートしてもらうことも叶いません。

きっと、大企業のお仕事をたくさんされた方のイメージなんだろう・・・というイメージを持ちました。確かに大手代理店や大手メーカーのマーケターやコンサルタントというと↓のようなちょっとお堅い人たちで、やたらと(無駄に多くの)横文字を使って、分厚い資料をつくっているイメージかもしれません。



しかし、私のような地方・地域のマーケターが実際に行っているのは、お客さんの現場に行って話を聞き、事業内容や経営状況をお伺いし、実際の商品・サービスを体験し、SNSやWebサイトと照らし合わせて一貫性があるかを確認しつつ、戦略を考えながら今すぐできる戦術を考えて提案(場合によっては一緒に実践)し、必要であればクリエイティブ周りも手を動かしていく、と言った、野良の武士・地上の傭兵・総合地下格闘技のような存在であると思っています(名前はかっこいいのですがやっていることは何でも屋)。


事業戦略を考えながら、マーケティングで仕組みをつくる準備をしながら、足元の改善を進めていくようなイメージです。


私自身、予算が潤沢にあるナショナルクライアントのプロジェクトは数えるくらいしか参加していないのでよくわからないのですが、地方においては上記の仕事がマーケターに求められる素養だと思っています。


となると、「マーケターが最終アウトプットをわかっていない」という状態がいかにリスクか、ということだと思いますし、そもそもマーケターが最終アウトプットの品質管理もしなければならないというのが実態だと思います。


だから、本書に書かれているようなマーケター・コンサルタントが最終アウトプットまでタッチしない案件においてはそうかもしれないのかな、と感じました。



私はスモールジャイアンツでありたい


スモールジャイアンツとは何か?

dyna-searchでは以下の通り定義されています。

スモール・ジャイアンツとは「小さくても偉大な会社」。 規模の大きさ(売上や利益の拡大)を目指すのではなく、「従業員が活き活きと働ける最高の職場づくり」「お客様を喜ばせる優れた商品やサービスの提供」「地域社会とともに歩む姿勢」「唯一無二の企業文化の育成」などを最優先に実現すべきこととしている企業のことを指します。 そして、それを実現するための経営基盤として、企業の「社会的存在意義(コア・パーパス)」と「中核となる価値観(コア・バリュー)」を定め、それらを社内の結束を強める求心力、社員の日々の行動の基準となる原則として活用しているのです。

スモールジャイアンツになるには以下を定める必要があると言われています。


1.会社の存在意義を定める 「売上」や「利益」を目的とする会社には所詮限界があります。スモール・ジャイアンツは、「会社の究極的な存在目的」=「事業活動を通して社会にどんな価値を提供するのか」を明確に定め、会社の構成員が日々一丸となってその実現に取り組みます。それゆえに、地域の人たちや顧客や社会にも愛され、応援される存在になるのです。 2.会社の中核となる価値観を定める日々の行動や意思決定の基盤となる「価値観」を定め、従業員の大多数がそれに則って行動します。一貫性ある言動は顧客や世間の信頼を生み、また、社内で「大事なもの」が共有されていることから、結束の固い組織ができます。 3.目的や価値観を日々遂行するための制度や仕組みをつくる 会社運営の中で重要な活動(採用・人事評価・教育)や働く人ひとり一人の行動の中で、「価値観」がただの言葉に終わらず、「実践」につながるように、目的や価値観に基づく制度や仕組みをつくり、会社の皆でその実践を徹底していきます。

また本書では以下の通り定義されていました。


スモールジャイアンツとは

このスモールジャイアンツには3つの柱があります。 ①Integrity(正直であること):間違ったイメージを打ち出さない ②Professionalism(プロ意識):顧客に約束したことは必ず守る ③Human Connection(人間関係):従業員の人間らしい関係の構築

dyna-searchでも、本書でも、共通しているのは誠実であること、高いプロ意識を持ち実践しているということ、人間に向き合うということ、の3点かと思いました。


現在、私が携わっている仕事は全国や世界規模のように大きくないし、私がいなくなったら回らないくらい属人性も高いし、無論再現性も高くありません。


マーケティングを自動化して役割分担を決めてスケーラビリティを求めていく、ということはやろうと思えばできるかもしれません。でもやりたくない。


なぜ大きくしたくないのか?というと、大きくするには役割を決めて効率的に仕事を進めていくということ。効率的というのは仕事の領域を決めること。つまりそれはやらないことを決めるということ。自分の職務領域を決めることは大切ですが、目の前で「自分の領域じゃないけれど、これ絶対やったほうがいいよな〜」ということがあっても目をつぶる、ということです。


もしそれが自分の仕事じゃなくて、お金にもなりづらくて、でも解決すれば事業にも経営にもとてもプラスになる、ということだったらどうでしょうか?目を瞑って通り過ぎることはできますか?私はできません。


ついつい「これ、やったほうが良くないですか?え?できる人がいない?そうか〜じゃあこれやっておきますね(orやれる人を連れてきますねor一緒にやりませんか?)」と話しかけてしまいそうです。



だから私はSMAPでいい


だからこそ、私は大規模な組織体ではなく少数で個体力のあってスタンドプレーができる人たちと仕事をしていきたいと思っています(学生や若者については早いうちから現場のリアルを学んでほしいという意図でインターン制度を敷いています)。要はSMAPです。



左利きのエレン

なぜSMAPか?それは個体(一人ひとり)でも強いのに、集まったらもっと強いからです。



寄せ集めはチームじゃない
「こいつが居なきゃまとまらねぇとか、この組み合わせじゃねぇと本領が発揮しねぇとか、そんな寄せ集めはチームじゃねぇ」

出典:神谷雄介



結論:アートディレクターと仲良くなりたい


色々と好き勝手まとめましたが、結論言いたいのはアートディレクターと仲良くなりたい!と思っています!!


なぜなら私たちマーケターがクリエイティブをタッチすることは本来あまり良くないことだと思うし、デザイン思考を持ったクリエイターが扱ったほうがはるかに良いアウトプットになるからです。


だからこそ、地方にもっとアートディレクターが増えてほしいし、一緒に仕事したいし、良いものをつくっていきたいと思っています。


なのでアートディレクターの方、よかったら一緒に話しませんか?Twitterでも、noteでも、Webサイトでも、お気軽に声かけてください。


これからもマーケティングの力で地域をもっともっと元気にしていきます。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。



HONE社ではマーケティングと組織課題に向き合っています


以上が「セルフブランディングはブランドエクイティピラミッドをつくることから始めよう。」で印象に残ったポイントでした。


また弊社では地方企業さまを中心にマーケティング戦略の伴走支援を行なっています。

※事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。


私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだブランド戦略サポートプランでは全5回でマーケティングの太刀筋を学べるものになっているため、ご興味ある方はご検討いただけたらと思います。


その他、マーケティング・ブランディングに関するお問い合わせはこちらまでお気軽にどうぞ!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 

【記事を書いた人】


株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

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